FLEDGE Dlinks#1:働きながら、学びの環境をどうつくるか?【Dlinks報告レポート①】

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2017年7月5日、第1回FLEDGE Dlinksが行われました。平日の夜の開催ではありましたが、ゲスト2人に加えて、20名弱の参加者にお集まりいただきました。

■FLEDGE Dlinksとは何か?

これまでの約7年半の活動を経てきたFLEDGE。そしてその卒業生コミュニティにあたる「FLEDGED」のメンバーも今や130名を超え、FLEDGE参加当時は大学生だったメンバーも、各々の領域で立派に社会人として活躍しています。

FLEDGE DlinksはFLEDGEDをそうしたメンバーたちのための学びの場として機能させるべく企画されました。コンセプトは「働きながら、学びの環境をどうつくるか?」。毎回の卒業生ゲストを2名お呼びしお話を伺いながら、大学在学中にFLEGDEで経験した「学びの環境を自分でつくる」という経験や姿勢が、その後の社会人としての仕事のなかでどう活かされているのか。それらについて具体的経験を交えながら共有し合い知見を深めていくことを目的としています。

今回のゲストは1期の森山誉恵さんと、2期の山田小百合さん。森山さんはNPO法人3keysで、また山田さんはNPO法人Collableで、それぞれ代表理事としてご活躍されています。今回はまず森山さんから現在の活動についてお話しいただいたのち、質疑応答というかたちで「学び」をテーマとしたディスカッションを行いました。その後、同様の流れで山田さんの活動紹介と質疑応答、というタイムテーブルのもと、進められました。

■パネルディスカッション その1:森山誉恵さん

まずは森山さんの活動紹介から。現代社会において、貧困や両親との関係の不和をはじめとしたさまざまな環境的要因によって、子供たちが社会的・経済的に孤立してしまうケースが報告されています。そういった現状のなか、森山さんが代表を務めるNPO法人3keysでは、民間主体の支援を通じたセーフティネットを構築し、子供たちを見守り、伸ばしていく大人たちを増やすことをミッションとしています。

当日のプレゼンテーションでは、日々の業務の中で直面した実際の事例を交えながら、具体的な業務の内容や難しさ、意義深さについてお話しいただきました。また、今回あらかじめ設定された問いのひとつである「働きながら学ぶために意識していることを教えてください」という問いに答えるかたちで、まずは「何かのスペシャリストであるよりも、できる限り幅広い知識を身につけること」と、またそれに関連して、「いかに自分のアンテナの外のものをキャッチしていくか」を常に意識している、といいます。

まず「幅広い知識を身につけること」が重要とされる背景について、「NPO団体特有のステークホルダーの多様さがある」と森山さんは言います。一般的な営利企業では、サービスの受益者がお金を払い、そのまま利益提供者として関係してきます。しかしNPO団体の場合は多くの場合、支援活動の受益者とお金の出し手が異なっています。簡単に分けただけでも、「支援を受ける子供たち」、「寄付者を中心としたお金の提供者」、「ボランティアの人たちなどの労働の提供者」の3種類のステークホルダーが個々に存在しています。

それに、「ボランティア」や「寄付者」とひと口にいってもその中にははさまざまな年齢・職種の人がいます。そうした多様なステークホルダーたちと個人的に深く交流しながら関係をつくっていくうえで、幅広い知識は欠かせないのだそう。たとえば関係者内の飲み会の席に同席する上でも、相手の興味・関心のある領域について見識がなければ、地に足のついたコミュニケーションは望めません。そのため決して自分の知識が興味のある分野だけに偏らないように、日々の生活の中でも今まで身近ではなかった分野の本や、作品に積極的に触れていくことが強く意識しているのだそうです。また他にも以前に縁のあった子供たちともできる限り時間をとって悩みを聞き、太い関係性を維持していくことも、重要な活動のひとつとして挙げていました。このようにふだんから自分のリソースを培うことを意識しつつ、そのリソースを駆使しながらまずはいろんな人のリアルな関心や問題を深く理解する。そのあとで、その相手が抱える問題にとって、どんな専門性が必要なのかを見極めて、各分野の社員の知見を借りながら解決をめざしていく。そうした地道なプロセス経て、はじめて良いサービスにつながっていくのだと話してくださいました。

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■パネルディスカッション②:山田小百合さん

続いて登壇したのは、NPO法人Collableで代表理事を務める山田小百合さん。山田さんは2013年にNPO法人Collableを設立して以来、「どんな人でも豊かな関係性が絶えない社会をつくる」活動を続けてきました。「多様性・ダイバーシティ」をキーワードとして掲げながら、たとえば知的障害・身体障害を抱える人びとであっても、福祉的な意味を超えて様々な人びととゆるやかな出会いや関係性を持てるような活動のデザインに取り組んでいます。

今回のプレゼンテーションではまず大学・大学院での様子からお話からはじまりました。「大学時代に様々な活動に手当たり次第に参加しながら、それでも最終的に、そうしてやってきたことの多くは他の人でもできることなのだろうと気づいた」と山田さんは言います。そこから「自分にしかできない活動」や「自分の問題に対する答えを出すような活動」をしたいと思い、大学院に進学。大学院の指導教官だった山内先生の助言からCollable設立を決め、今日の活動に至るのだと、当時抱えていた個人的な経験や思いをベースとしたお話を聞かせてくださいました。

そして今回のテーマに関連した問いとして、「大学生・大学院生だった当時の学びを振り返って、Collableの活動の中で活かしていることは?」という問いを選び、それに答えるかたちで、以下の5つの点を挙げていました。

場づくりの活動を行う際は、今でもFLEDGEの教科書である「ワークショップデザイン論」をベースとしていること。
・定例ミーティングを時々「読書会」「輪読会」にして実施していること。
・実践の振り返りを書籍を用いて考えることを「文化(習慣)」として根付かせたこと。
・自分の考え・気づきを「臆することなく」言葉にすることを許せる場にしたこと。
・NPOやソーシャル関係の仲間との勉強会、知識シェアをカジュアルにやっていること。

なぜこのような活動を積極的に取り入れているのでしょうか。その理由として山田さんは、個人的に学部・大学院での経験を経て培われた「インプットとアウトプットを繰り返すことが重要であり、そのような働き方を目指す」という意識を強く持っていること、そしてそういったシンプルなリズムを、代表である山田さんだけではなく、Collableという組織の中で学びを生み出しつつけるために、「学習」の場を身近に取り入れようとしていることを話してくださいました。

そのあと行われた山田さんに対する質疑応答の時間では、「障害を持つ人も様々な人がいるにもかかわらず『障害者』と一括りにされてしまいがちななかで、個性を認めていくにはどうしたらいいか」や、「偏見を持たないためにはどうしたらいいか?」などの質問が寄せられました。そして、それらの質問に対して、山田さんは、「よく知らない相手に対してはどうしてもフィルターがかかってしまうので、まずは関係を作っていくことが大事」と言います。関係を作っていく中で、どうしても難しいことや、困ったことが出てくる。そこで初めて、障害をそれらの事象のエビデンスの一つとして使う。まずは、その人の個性が見えるくらいまで、関係を作っていくことが大事なのだと、話してくださいました。

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■ダイアローグ:様々な人と働き、合う人・合わない人もそれぞれいるなかで、学びを深められるような「場」をいかに作っていくか。

質疑応答に続いて、今回のテーマに関して会場全体で考えを深めていくダイアローグのセクションへと移っていきました。進行のへるめさんから投げかけられた問いは、「様々な人と働き、合う人・合わない人もそれぞれいるなかで、学びを深められるような「場」をいかに作っていくか」。主な内容を抜粋すると、以下ような流れで、緩やかな空気のもと進められました。

”私の場合、攻撃性が強い人や他者を受け入れらない人は何かしらそういう自分がそういう経験をされてきた人が多いように感じていて、そういう人を受け入れた時は、なるべく責めないようにする。そうじゃないと、さらに理解が遠くなってしまう。そういう努力をする一方で、大人になってからそういうのを変えるのは難しくて。代表という立場上できることなのかもしれないし、その人との関係性にもよるけど、自分にもう少し向き合う時間を設けて欲しいとか、必要があればカウンセリングを受けてもらうとか、職員くらいの人には言います。職員じゃなければ、私たちが求めていることは違うよとしっかり伝える”

 

“でも、伝え方が難しいよね?”

 

“難しいですよね。だからこそ、子供のうちからもっと、というのはすごい思っています。もっと、周りの大人や社会を信頼できるようになってもらう体験とかしないと、大人になればなるほど難しくなっていくなあと感じるので”

 

“あなたのコミュニケーションの仕方が終わってるんです」って、直接言ったりしないけど、でもいま起こっているコンフリクトの原因が自分自身が原因だって気づいてない人に、どう自覚させるか。一方で僕がそういう人である可能性もある。その場合、どこで確認すればいいのか。どこまで諦めないでお互い関わればいいのかっていう”

 

“すでに色々齟齬が起きてて、不毛な時間を過ごしちゃう会議が多いとか、そういうコミュニティに居たとして、それは自分一人から変えていけるか、無理なのか。どうなんだろう”

 

“僕は会議とかで、議論の歯車が噛み合わない時とか、空気を変えたいなって思ったら、不自然じゃないタイミングで手を叩くんですよね。「あの!(パンッ!)まじで頑張っていきましょうよ!」みたいな。結構強めに叩くと、ほら、いまも全然空気変わったじゃないですか。そういうことはする。完全な解決策にはならないけど、あの空間だけはちょっとよかったなかもしれないな、とか、そういうところからじわじわ広がるんじゃないかなとかは、信じてる”

 

“諦めてないんだ?”

 

“諦めてない。めっちゃ変えたい”

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〈FLEDGEDLINKS#1 ゲストプロフィール〉

takaesan森山誉恵 Takae Moriyama

NPO法人3keys 代表理事 / FLEDGE1期生

慶應義塾大学法学部卒業後、子どもたちの生まれ育った環境に寄らず必要な支援が行き届くことを目的としたNPO法人3keysを設立·現代表理事兼職員。東京都共助社会づくりを進めるための検討会委員。全国子どもの貧困·教育支援団体協議会幹事。

現代ビジネスでの連載をはじめ子どもの格差の現状を講演·執筆·メディアなどで発信中。  http://3keys.jp/

 

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山田小百合 Sayuri Yamada

NPO法人Collable 代表理事 / FLEDGE2期生

1988年生まれ。大分県出身。重度知的障害を伴う自閉症の兄と弟の間で育つ。日本女子大学 家政学部 家政経済学科を経て、東京大学大学院 学際情報学府に進学し、インクルーシブデザインや学習環境デザインの切り口から、障害のあるなしに関わらないワークショップに関する実践研究を行う。修士課程修了後、ワークショップや調査·開発をしながら、大人、子ども、障害者や高齢者、マイノリティ等、誰もが包摂される学びと創造の場をデザインするNPO法人Collable設立。京都造形芸術大学通信教育部非常勤講師。http://collable.org/